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卒業の朝 ★★★

歴史教師のハンダートは、最初の授業で「いかに権力を握ろうとも、社会に“貢献”していない人物は、歴史に名を刻めない。あわれな末路を辿るだろう」と生徒たちに諭す。
そう。ハンダートは、何十年間もの間、歴史に名を刻んだ人間たちを賞賛し尊敬し、彼らに多くを学ぶべきだと、教えを説いていたのだ。
ところが、自分の教えに背き、不正を繰り返し、コネや財力だけで大企業のトップに上り詰めたベルに呼び出され、再び裏切られる。ベルはこれからも、同じような生き方をし、やがては市議会議員となり、ともすると歴史に名を刻むかもしれない。よりによって、ハンダートはそのベルから、「自らこそが、ただの教師であり、歴史に名を刻むことなく老いていくしかない人間」であると気づかされるのだ。
教師と教え子、名もなき自分と名高いベル、歴史に埋もれた陰の偉人たちと歴史に名を残す偉人、この何十もの意味を持った二人の人間の対峙、それぞれの心に潜む感情の“なんともいえない複雑さ”が、この映画の最大の持ち味であり、最も深く感銘するところであった。

ストーリー:
1976年アメリカの名門校・聖ベネディクト学校で、古代ギリシャ・ローマ史を教えるハンダートの受け持つクラスに、ベルが転校してくる。上院議員である父親への反発から問題行動を繰り返すベルに、ハンダートは、学校の伝統行事である「ジュリアス・シーザー・コンテスト」という課題を与え、教師としてはあるまじき「ひいき」までして、ベルを導こうとする。が、その期待はあっさりと裏切られる。25年後、父親のコネで、アメリカ有数の大企業のトップとなったベルは、ハンダートとかつてのクラスメイトたちを招待し「ジュリアス・シーザー・コンテスト」を再現しようとするが、またしても不正を行うベルに、ハンダートは再び人生を諭しながらも、教師として自信を失いかけ、さらには校長という役職を剥奪され、処世術に長けたものが成り上がり権力を握る世界に失望するのだが、そんな世の中であっても、自らの教えにもとづき努力した人間たちが立派に成長し、幸せになっていることに気づいた半ダートは自信を取り戻し、教職に復帰する。そして、愚直な名もない英雄が、歴史にうもれているかもしれないことに、想いを巡らしながらも、再び歴史の教えを説き始めるのだった。

by kanai_77 | 2006-01-22 14:33 | サ行  

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